江戸時代のベストセラー「北越雪譜」と鈴木牧之
江戸時代のベストセラー「北越雪譜」と鈴木牧之
鈴木 牧之(すずき ぼくし)は、明和7年1月27日(1770年2月22日)に越後魚沼郡塩沢に生まれました。幼名は弥太郎。通称は儀三治(ぎそうじ)。牧之は俳号で、雅号は他に「秋月庵」「螺耳」などがあります。父は鈴木恒右衛門(俳号は「牧水」)、母はとよ。
鈴木屋の家業は、地元名産の小千谷縮の仲買と質屋の経営で、地元では有数の豪商であり、三国街道を往来する各地の文人も立ち寄り、父・牧水も文人たちと交流がありました。牧之もその影響を受け、幼少から俳諧や書画をたしなむこととなりました。
9歳の時、縮80反を売却するため初めて江戸に上り、江戸の人々が越後の雪の多さを知らないことに驚き、雪を主題とした随筆で地元を紹介しようと決意したといわれ、これが後に『北越雪譜』として出版されます。
帰郷し執筆した作品を寛政10年(1798年)、鈴木牧之28歳のころ、当時の人気戯作者山東京伝に添削を依頼し、出版しようとしましたがうまくゆかず、その後も曲亭馬琴や岡田玉山、鈴木芙蓉らを頼って出版を依頼しましたが、なかなか実現できませんでした。
しかしようやく、山東京伝の弟山東京山の協力を得て、天保8年(1837年)『北越雪譜』初版3巻を刊行、好評を得て当時のベストセラーとなりました。一説には、販売部数は700部とか。続いて天保13年(1842年)にも4巻を刊行しました。
『北越雪譜』は初編3 巻3 冊と第2 編4 巻4 冊とから成ります。その初編には顕微鏡で見た雪の結晶をはじめ、雪の中に生きる虫たち、雪崩や吹雪やつららの話など、今日の自然科学に関すること。雪国に生きる熊や鮭の生態といった生物学に関すること。
越後縮などの伝統産業に関すること、雪の中の幽霊の話などの怪奇現象といった文化人類学の話題など、雪にまつわるありとあらゆるエピソードが掲載されています。そして、その第2 編は春夏秋冬に分けて、里人の風俗習慣や年中行事など、雪国の生活全般が描かれています。
鈴木牧之の著作は、他に十返舎一九の勧めで書いた『秋山記行』や、『夜職草(よなべぐさ)』などがあります。また画も巧みで、馬琴の『南総里見八犬伝』の挿絵の一部に採用されたり、牧之の山水画に良寛が賛を添えたりしています。
文筆業だけでなく、家業の縮の商いにも精を出し、一代で家産を3倍にしたという商売上手でもあったと伝えられ、また貧民の救済も行い、小千谷の陣屋から褒賞を受けています。
多彩な能力を発揮した鈴木牧之ですが、南魚沼市に記念館があります。
鈴木牧之記念館
- 住所:〒949-6408 新潟県南魚沼市塩沢1112-2
- TEL&FAX:025-782-9860
鈴木牧之著作の北越雪譜を電子テキスト化したページがありました。
—北越雪譜は,雪深い現在の新潟県の生活を描いた民俗史料の一つです。
江戸時代の農村の生活や雪国の研究など、お役に立てれば幸いです。—